先日、Android を含むモバイル向け Flash Player の開発中止を受けて、私のところにもいろいろ相談が来ました。今後、Flash向けのコンテンツを作っても先がないのではないかというのです。

その前に、何が開発中止されたのかをおさらいしておきましょう。

ニュースサイトから要旨の抜粋:

  • アドビが Android を含めたモバイルブラウザ向け Flash の開発終了を発表
  • アドビは今後、Flash のモバイル戦略として Adobe AIR を利用したネイティブアプリへの変換機能を推進していく
  • もちろん、PCでのFlash開発も継続

ですから、Flash事業自体の開発が終わるわけではないというところがポイントです。また、個人的には、まだまだしばらく「Flashは現役」であり、「Flashは生き残る」というのが私の意見です。

というのも、これまでFlashで作っていたコンテンツの全てがHTML5にシフトするのかというと、すべてを移し替えることは結局できないと思うからです。

もともとFlashはWebアニメーションのツールとして始まっており、この分野ではFlashの完成度が非常に高いというのが一点目の理由。そして、HTML5自体が策定途上であり、Flashの全ての機能を備えているわけではありません。またHTML5に関連したツールはまだまだ開発途上であり、Flashの完成度には及ばないというのが二点目の理由です。ですから、しばらく、Flashは現状維持の方向と思っています。また、Flashを覚えたクリエイターも、しばらくは、手に馴染んだツールを使い続けるでしょう。

つまり、世の中の流れとしては、HTML5に流れているものの、全て置き換えられるわけではないというのが結論です。

加えて、Flash関連技術で利用できる分野には今のところ以下のものがあります。

  • PC向け
    • PCのWebブラウザ向けFlashでできること(Flash Player)
      • Chromeでは標準でFlashがインストールされている
      • Webアニメーション
      • Webゲーム/SNS関連
      • リッチクライアント(RIA)
    • PC向けデスクトップアプリ(Adobe AIR)
      • 一度作れば、Win/Mac/Linux上で同じように動かすことができる
  • モバイル向け
    • モバイル向けネイティブアプリ(Adobe AIR)
      • Google PlayやApple AppStoreでリリース可能
    • モバイル向けFlash(Flash Player)
      • 今回、開発中止がアナウンスされた

このうち、今回、開発が中止されるのが、モバイル向けFlashプレイヤーのみです。ですから、開発が中止されてFlashを動かす端末がなくなってしまうという心配は当面ありません。デスクトップPC向けのFlashに関しては、全くこれまで通りなのです。しかも、Flashがモバイル事業全体から手を引くのではなく、Webブラウザで動くプラグインを提供しないというだけで、ネイティブのアプリを作る機能(Adobe AIR)は、そのまま開発が継続されます。

とは言え、世の中の流れとしては、PCのWebブラウザをターゲットとしたFlashでも、リッチコンテンツの開発、特に業務向けのアプリ開発では、Flashを採用する場面は減っていくと考えられます。(この分野では、既にHTML5の能力で十分カバーされています。)

ですから「今後Flash向けの開発は止めた方が良いのか?」と聞かれたら、今のところHTML5で代用が可能なのか考えつつも、Flashを使い続ける方が自然という感じでしょう。簡単に今後もFlashを使い続ける分類を考えると以下のものが挙げられます。

【Flashが生き残る分野】

  • Webアニメ
  • Webゲーム(グラフィックが本格的なもの)
  • Webガジェット
  • スマートフォンのネイティブアプリ
  • Win/Mac両方で動かす必要のあるデスクトップアプリ、ガジェットなど(*1)

【HTML5に移行する分野】

  • ライトゲーム(比較的仕組みの単純なもの)
  • 業務系のアプリ、ツール系のアプリ
  • 動画など

ちなみに、(*1)はAdobe AIRで注目された技術ですが、Adobe AIRを使うなら、HTML5を利用してデスクトップアプリを作ることも可能です。

そして、スマートフォン+Flashで注目の技術と言えば、iOS/Androidなどのスマートフォンで動くアプリが、ほとんど変更成しに作れる、Flex(Adobe AIR)の技術です。Flashの技術を利用して、iOS/Androidで動くアプリを手軽に作れるのですから、かなり良い感じです。

ページを開いて、すぐに動かないとしても、うまくWebから誘導して(AppStoreやGoogle Playへのリンクを張ることで)使ってもらうことができるでしょう。というのは、ガラケーのゲームでも最終的にはJavaアプリをダウンロードさせていました。無料でゲームを遊ぶためなら、ユーザー側は少しの労力なら惜しまず、インストールして遊んでくれるでしょう。また、ユーザーはAppStoreやGoogle Playの画面は見慣れているでしょうから問題ないでしょう。

【参考】