特別特集記事です。

IoTで私たちの生活は変わる? 海外事例からみる未来図

「IoT」という言葉が単なるバズワードではなく、実装可能なテクノロジーとして身近な存在になってきているとを感じる方も多いのではないでしょうか。IoTというと、「スマート○○」という名もとに人気を集めているスピーカや時計、メガネ、自動車、そして家電の設定やセキュリティまで一括して管理できる住宅など生活に関する製品・サービスが思い浮かびます。

しかし、最近ではビジネス用途でのIoT活用も着実に具現化されていることをご存知でしょうか?

例えば最近では日本でも、オフィス内の人の動き方をデータ化して会議室利用状況を可視化し「働き改革」に活かす例。また、工場やプラントの作業員の「危機管理」をしたり、オペアンプなどのセンサ機器と連携して自動化、省力化をする例。さらには、倉庫内積み込み作業と配送トラックのデータを共有して「物流の効率化」を図る例など目的に応じた活用ケースなど着実に増えてきています。

ガートナーの調査によると2023年の終わりまでに50%以上の企業が少なくとも6つのIoTテクノロジーを採用することになると予想されているというので驚きです。

IoT技術でデータを収集し、分析結果を使ってサービスを提供するというスキームは、家の中から、オフィス、さらには都市というようにますます範囲を広げて実現化されています。

日本では都市全体でのIoT活用はまだこれからですが、海外では欧州を中心に「スマートシティ」の取り組みが進んでいるのです。

Ciscoの発表によるとスペイン・バルセロナではIoTセンサー解析によってスマートパーキング、スマートバスストップ、さらにはごみ収集・処理にまでデータ化、効率化が行われているとのこと。2000年から2010年までの調査に基づく試算によれば、IoTによる経済効果は年間89億ユーロ(1兆円) にものぼるといいます。

IoTによる便利で人に優しい街づくりは今後も加速していくと考えられます。IoTはAI活用とも親和性が高く、テクノロジー活用からは目が離せません。2019年7月のインド・マイクロソフト社の発表によると、AI技術を障がいをもつ人のために活用する方針があるという。マイクロソフト社の「Seeing A」は目が見えない人に、色や形、人の様子などを伝えるために活用できるアプリケーションだといいます。インド・マイクロソフト社CEOのMasheshwari氏はマルチセンシング、マルチデバイスによってすべての人に拓かれた未来の可能性を示唆しました。

このようなAI技術が「スマートシティ」にも取り込まれ、IoTテクノロジーと融合すると多くの人々の生活を変える時代がくると想像できます。

さて、こんなIoT時代がやってきたとき重要になるのは「データマネジメント」の考え方です。経営者、業務担当、そしてデータ分析担当の方まで、IoTサービスを構想するすべての方に関わるこの問題を考察していくことにしましょう。

IoTプロジェクトに問われる「データマネジメント」とは?

流行りに乗って「何かをしないと」と焦ってIoTを始めると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。IoTに限らず、AI活用やデータサイエンスの世界では、「データマネジメント」なしには持続的なプロジェクトの成功は難しいと言われています。

「データマネジメント」とは何でしょうか。データベースはきちんと整備されているし、それだけでは不十分なのか?という疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。

「データマネジメント」とは単なるデータの格納、保存だけではなく、必要な情報を組織内で参照、分析利用ができるようにデータにタグ付けをしてガバナンスを持たせたプラットフォームのことをいいます。IoTプロジェクトを進めることになれば、日々舞い込んでくる大量のデータを処理し、既存データと合わせて分析をしながら、サービス化していく必要がありますので、このようなプラットフォームは大変重要です。

しかし多くの組織がこのプラットフォームを持たずにIoT / AIプロジェクトを始めます。プラットフォーム自体の投資効果は単独では見えづらいので、後回しになりがちなのです。

IoTは生活や業務に密着している分、アプリケーションの見直しやデータ加工~分析まで、非常に速いスピードで試行錯誤ができる組織環境が不可欠です。

ガバナンスの効いたデータプラットフォームがあれば、データのやり取り、コーディングからアプリ開発、業務連携、修正まで一貫して迅速にコミュニケーションすることが可能です。これはデータ分析部門、情報システム部門、そして業務担当部門のすべての方を楽にする、まさに「三方よし」のプラットフォームです。顧客サービスの質も向上すれば「四方よし」と言えるかもしれません。

実際にIoT / AIの現場を見ていると、スタックする開発プロセスは「データマネジメント」がしっかりできていれば解決することが多いことも事実です。

また、データマネジメント対策を行うことはセキュリティ面でも有用です。

欧州で試行されたGDPR(一般データ保護規則)では、政府当局からデータ管理の開示を求められたとき迅速な対応が必要です。顧客50万人分の情報流出によってブリティッシュエアウェイズ社が250億円もの違反金を支払ったというニュースが記憶に新しいですが、このような事態を避けるためにも、データマネジメントは重要な役割を持ちます。

データの管理、アクセス権、そしてコーディングからアプリ開発まで一貫して管理することは日本のセキュリティ対策にとっても必須といえます。

まずはひとりからでも 声に出して変わる開発の現場

「データマネジメントの必要性は分かったけど、組織のなかでどう始めていけばいいのか分からない!」という方も多いかと思います。でもご安心ください。

まずはIoT時代にデータマネジメントが必要な整備である、ということを理解できたら大きな進歩です。

組織に所属してデータ分析を行う人もいれば、個人でデータサイエンティストを生業にしている方もいるかもしれませんが、どんな方でもまずできるのはオープンソースのプラットフォーム基盤やクラウドデータサービスを使って、データのやり取り、コードの共有をするということです。「スマートなコミュニケーション」を実現することは「データをきちんと管理する」ことに大きく関係するからです。

「データマネジメント」は組織の業務改革や人の意識改革を伴うので、1日2日でできることではありません。自分の所属する組織や取引相手にいきなり「データガバナンスを効かせましょう」と言っても、上手くいきそうにありません。

そんなときは「より効率的なコミュニケーションを考えませんか、生産性の高いIoTサービスを開発するにはどうしたら良いでしょうか」と声をあげてみてください。

IoTプロジェクトのコミュニケーションで最も大切なものはデータの取得、取り扱い、そして管理です。効率的なコミュニケーションを目指すことは、データマネジメントへの問題に目を向けることにつながります

データマネジメントは、あくまで手段です。日ごろの会話の一場面で、まずは「コミュニケーションの悩み」を聞いてみるところからはじめると、データマネジメント推進への切り口が見つかるかもしれません。

たった一言からでも、IoTプロジェクト成功の大きな前進につながります。未来のIoT時代を作るために、まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

※2019/07/26 公開 (1y)